餅生地のふわふわ食感が楽しめるこしあん入りの「青」、焼き目をつけた粒あん入り「お焼」各150円。各5個入りの「青焼」1300円=西島渚撮影
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総本舗 白酒屋(奈良)

 牡丹(ぼたん)の名所としても名高い長谷寺の門前。湯気がもうもうと上がるせいろから餅生地が取り出され、素早く臼へ。「せーの。えっしょー。ほいしょー」の掛け声勇ましく杵(きね)つきされていく。その速度はややゆっくり。「ウチではたっぷり混ぜ込むヨモギ新芽の量を季節や天候で微調整しています。全体の水分量を含め、完成度を見極めながらつくのでゆっくりなんです」と話すのは4代目の谷口裕武郎さん。父である3代目の力も借りながら店を営んでいる。

 明治8年創業。当初は造り酒屋だったが、戦後、餅を売るように。「戦時中に旅館業も始めた曽祖母が、配給の砂糖を少しずつためておき、甘いものを待ち焦がれていた参拝客のために“くさ福餅”を発案。大いに喜ばれて名物になりました」

 つきたて、とろける軟らかさ…

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