駆除作業で山積みになったコウガイセキショウモなどの水草=2023年9月、熊本市東区の下江津湖、杉浦奈実撮影

 在来の希少種に紛れ、気づいたときには本来、水槽のなかにいるべき人工の雑種が環境を乗っ取っていた――。

 動物園や市街地に隣接し、熊本市民の憩いの場となっている江津湖。湖岸近くの水面を緑色の細長い葉が覆っている。

 風で吹き寄せられたその草を割るように、ボートに乗った大学生たちが沖にこぎ出していく。

 「コースの途中にも浮いていて、オールや、ボートに引っかかる。水に手を入れて取り除かなければならず、練習にならないこともあります」。江津湖を練習場所にしている熊本大学のボート部員は、困り顔を見せた。

 「全部、コウガイセキショウモです。なぜかわからないですが、根っこごと抜けて浮いてくるんです」

 ヒトによってつくられた生きものが、本来いないはずの野外でじわりと広がっている。ヒトの管理下で飼われ、栽培されるはずだった故郷なきものたちが逃げ、時に放たれ、地域本来の自然を脅かしている。

 湖を管理する熊本市から委託…

共有