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2023年9月末に全面閉鎖された「日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区」=2024年7月26日、広島県呉市、朝日新聞社ヘリから、上田潤撮影

 日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区(日鉄呉)の跡地について、産業用地としての可能性を探る広島県と呉市の共同調査結果が7日、公表された。経済波及効果は最大6兆3千億円と試算。休止前の日鉄呉を上回るとした。

 調査結果によると、有望な成長産業は①産業用蓄電池や洋上風力発電設備の製造などエネルギー産業②半導体製造関連やデータセンターなどデジタル産業③造船業の3分野。①では初期投資と10年間の売り上げを加味した経済波及効果を6.3兆円、雇用人数は1800人と見込んだ。②は5.7兆円、1500人、③は2.2兆円、800人だった。

 一方、休止前の日鉄呉の10年間の経済波及効果を2019年度の出荷額を元に試算すると2.4兆円で、雇用人数は協力会社を含め3300人。造船業を除く2候補が、経済波及効果で上回った。

 県と市は調査費計2千万円を予算に計上し、民間のコンサルタント会社に調査を委託していた。

 跡地をめぐっては2024年春、防衛省が「多機能な複合防衛拠点」を提案。一括購入に向けて日本製鉄と交渉中だ。同省は具体的な経済波及効果などの試算は示していない。

 防衛省案について県は「選択肢の一つ」として、他の利活用案を排除していないが、湯崎英彦知事は「どこかが受け入れる必要がある性質のもの」とも述べている。

 日本製鉄の担当者は、調査結果について「呉地区の地域特性やインフラの強みなどを踏まえたものと受け止めている」と話した。今後については「当社は早期に敷地全体を活用する方針のもと、具体的な提案のある防衛省案の検討を継続していく。引き続き、広島県、呉市とも連携協議したい」と述べた。

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