自らの死後、社会課題の解決に取り組む団体などに遺産を寄付し、活用してもらおうという「遺贈寄付」。超高齢化と、家族構成や親族関係の変化を背景に、関心が高まっているという。ただし、注意点も多い。
「遺産を世の中のために使ってほしい。多くの方にお世話になってきたので、お返しとして社会に『恩送り』をしたい。そんな思いから、遺贈寄付を検討する方が多いようです」
遺贈寄付の普及をめざす「全国レガシーギフト協会」(東京都)で理事を務める齋藤弘道さんはそう話す。
「遺贈寄付」に法律上の定義があるわけではない。公益性が高い活動をしている団体や自治体などに遺産を寄付することをさすことが一般的だ。本人が法的な効力をもつ遺言を書き、寄付先を指定する方法が一つ。そうした遺言はないものの、故人の思いを生かし、子どもなどの相続人が相続した財産から寄付することもある。ほかに死因贈与契約などで実現する方法もあるが、多くは遺言と、相続財産からの寄付という。
背景に超高齢化と家族の変化
遺贈寄付が注目される背景には、おおむね3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という社会の高齢化と、未婚や、子どもがいない人の増加など家族構成の変化がある。
離れて暮らす親族同士の関係も以前ほど濃密ではない。相続人がおらず最終的に遺産が国庫に納められたり、生前に疎遠だった親族にわたったりするより、社会に役立てたいと考える人が増えているとみられ、金融広報中央委員会の調査では、単身世帯で約9%、2人以上世帯で約5%が、子どもがいないなどの理由で遺産について「社会・公共の役に立つようにしたい」を選んだ(2023年)。
一方、高齢化で資産分布も高齢化しており、国の資料によると、家計が持つ金融資産のうち6割以上は60代以上が保有し、70代以上だけでも4割近い。老後への不安から資産が使われないまま、相続時には受け取る側も高齢者の「老老相続」となるなど、若い世代への資金移転が進みづらくなっていることも社会的課題と指摘されている。
関心が高まっている「遺贈寄付」。「社会課題の解決に使って欲しい」。そうした思いを持っていても、思いが必ず実現するというわけではありません。受け取りを断られることもあります。記事の後半で紹介しています。
自らの思いを残し、社会課題の解決に役立てられる「遺贈寄付」には、税制上の恩恵もある。
相続税を払うのは故人ではな…