細馬千佳子さん(左)の作品を見る寺村貴視子さん。ギャラリーの天井は高さ3・55メートル、床はヒノキ材を敷き詰め、作品を飾る白壁は珪藻土(けいそうど)で仕上げている=三重県伊賀市上野福居町
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 街中に美術館のない三重県伊賀市の中心部からアートを発信してきたギャラリー「ART SPACE IGA」が7月、オープンから10年を迎える。オーナーの女性は「私が楽しむためにやっていることもあるけど、一人でも多くの人に足を運んでほしい。『タダやから見とかないと損よ』」という。

松尾芭蕉にならい、重視するのは2つの要素

 このギャラリーで最近、2021年以来2度目の個展を開いた前衛美術家・細馬(ほそま)千佳子さん(62)=大阪府枚方市=は「都会のギャラリーとは違う」という。「近所の人が寄ったり、うどん店に貼られたポスターを見て来た人がいたり。(オーナーは)いろんな人とのネットワークがある。地域のコミュニティーの場のよう」

 オーナーの寺村貴視子(きみこ)さん(69)は「『ちょっと見に来て』と(道を通る人に)声をかけるから、『呼び込みギャラリー』と言われます」と笑う。

 貴視子さんは高校の書道教諭だった。夫の尚(ひさし)さんが伊賀市上野福居町にある古美術店「寺村清雅(せいが)堂」を経営。店の向かいにあった倉庫代わりの住宅が老朽化したため、38年間勤めた退職金をつぎ込み、建築家に設計を託して1年がかりでギャラリーを実現させた。

 アートが好きで、ギャラリー…

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