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HQの坂本祥二社長=2024年11月12日午後3時49分、東京都品川区、黒田早織撮影
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 「女性活躍」や「子育て支援」を強調する企業に、真の働き方改革はできないのでは――。リモートワークの生産性を上げるための福利厚生サービスを手がけるHQ(東京都港区)の坂本祥二社長(39)はその理由を「『ノーマルに働けない人の保護枠』に押し込めるだけだから」と語る。どういうことなのか。話を聞いた。

 実は日本の長時間労働は、生産性が上がっていません。働き手が減る時代に、どのような働き方が求められるのでしょうか。
 性別によって偏りが生じる働き方の問題点や、誰もが働きやすい新たな働き方について考えます。

――自社もリモートワークですか。

 「はい、リモートワークを実施しています。社員がどこに住むかは自由です。私は山梨に住んでいるし、鹿児島や静岡など首都圏以外の人も多くいます。フルフレックス制を導入し、深夜や早朝の労働も可能にしました」

 「きっかけは1年半ほど前、子育て中の社員に『夜に静かな環境で集中して働きたい』と相談されたこと。他の人からも『子供が寝たあとや起きる前に働きたい』との声が予想以上に多く、社会保険労務士に相談し、深夜残業も含んだみなし残業手当を整備しました。ともすれば『深夜も働かせ放題』になってしまう労務形態ですが、60人弱の従業員全員と意思疎通し、導入の趣旨を説明しました」

――働き方を柔軟にしたことで、どんなメリットがありましたか。

 「地方の優秀な人材、特に女性を採用できています。人材が必要な弊社側、仕事の選択肢が限られている地方の女性の双方にとってプラスです。さらに、少ない時間で成果を出せて、生産性が上がります。社内で計測したところ、エンジニアのプログラミングの作業効率も、営業職の面談件数も、明らかに出社時より在宅時の方が高くなっています」

 「社員たちは自社サービス『リモートHQ』を利用し、高性能のモニターやオフィスチェアなどで在宅勤務の環境を整えています。この環境を東京でかなえようと思うと、オフィスの賃料だけでものすごいお金が必要になる。会社としてもコストパフォーマンスが良いです」

意外とシンプル、円滑なリモートワークのコツ

――コロナ禍が落ち着き、リモートワークをやめた会社、必要性を感じながらも働き方を変えられない会社は多くあります。なぜリモートワークを定着させられているのですか。

 「経営者として働き方のビジ…

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