羽田発着枠争奪戦
5年ごとに迎える羽田空港国内線の発着枠をめぐる争奪戦。ドル箱の羽田路線は、航空各社の収益を左右するため、経営トップが火花を散らして議論します。方向性が固まる6月26日までの全4回でその様子を伝えます。
4月16日、国土交通省11階。
特別会議室は緊張感が張りつめていた。航空会社の社長4人と執行役員2人が横一列に座る。それぞれ青、赤、黄、黄緑――。自社のイメージカラーのネクタイが光る。
ロの字形の席で対面に座るのは国土交通省航空局の幹部たち。間に挟まれる形でこの会議を取り仕切る竹内健蔵委員長(東京女子大教授)らが座っていた。「公の場での足の引っ張り合い」(航空関係者)が始まろうとしていた。
議題は羽田空港国内線の「発着枠」だ。「スロット枠」とも呼ばれ、5年に1度、国交省主催の有識者会議「羽田発着枠配分基準検討小委員会」で議論される。
対象は465枠。ドル箱の羽田路線は、「1枠20億円の売り上げ」とも言われ、航空関係者は「あの場に出る役員たちは会社員人生がかかっている」と話す。
羽田の発着枠は評価項目ごとに点数化されて決められる。項目は、運賃を下げる努力をしているか▽安全を確保した運航ができているか▽羽田から地方にどのくらい路線を飛ばしているか▽行政処分を過去5年間受けていないか――などだ。
前回の委員会(2019年)後の配分はこうだった。
日本航空(JAL)…180・5枠(38・8%)
全日空(ANA)…168・5枠(36・2%)
スカイマーク(SKY)…37枠(8・0%)
ソラシドエア(SNJ)…25枠(5・4%)
エア・ドゥ(ADO)…23枠(4・9%)
スターフライヤー(SFJ)…23枠(4・9%)
※端数は片道分の枠
ここに、自治体と航空会社が組んで地方路線の利用者を増やすための案を競う「政策コンテスト枠」(5枠)と「新規参入枠」(3枠)が加わる。前回の委員会では19枠が国交省に回収され、16枠が航空各社に再配分された。大手2社は減り、スカイマークだけが1枠増えた。
今回の議論では19~23年度の各社の取り組みが評価される予定だった。ただ、この5年間はコロナ禍が約3年を占めるため、「正常な評価が難しい」として、3月にあった初回の会議での有識者の意見は「今回の回収・再配分は見送り」が大勢を占めていた。
空気を変えたJALのプレゼン
この日の会議。報道陣も見つめる前で、社長や役員によるプレゼンが始まった。持ち時間はひとり15分。この5年間の「自社の頑張り」を自らプレゼンしていった。
スターフライヤーの町田修社長とエア・ドゥの鈴木貴博社長は「今回は見送り」を主張。「コロナ禍で傷んだ経営状況が回復しきっていない」ということが主な理由だ。 ただ、3人目のプレゼンから会場の空気が一変する。日本航空の小山雄司経営企画本部長の発言だった。
「羽田での(2社以上の航空…