1月19日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さんです。
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高野公彦選
便利だがSNSは人間に神が与えた「トロイの木馬」（横浜市）島巡 陽一
物価高毛染めもやめる決心す山姥（やまんば）われに白髪（しらが）良しとす（飯田市）草田 礼子
便利なる本の宅配知りをれどけふも書店の棚から選ぶ（東京都）上田 国博
本屋には行かずネットで買う人は黒だけで絵を描いてる人か（市原市）笠原 英子
ふるさとの能登を憂える美容師の洗髪の指に力がこもる（松戸市）遠山 絢子
裏庭で立ち食いの栗鼠（りす）と眼が合えば餌（え）を差し出して分け合う仕草（アメリカ）大竹 博
「好きだけど住みたくはない」と自（し）が国を言わねばならぬシリアの子供（観音寺市）篠原 俊則
鴨と鵜の並ぶ川辺の道ゆけば熊鈴の音（ね）に一斉に翔ぶ（長井市）大竹紀美恵
惚（ぼ）け顔をしていますよと娘言う 三十一文字（みそひともじ）を思案中です（茅ケ崎市）若林 祐光
悪人は多分いないが物事を斜めから観（み）る歌人は多し（横浜市）毛涯 明子
【評】1首目、SNSは便利だが弊害も生み、これは神が人間界に送り込んだ刺客だ、と。2首目、ユーモアを交えて物価高対策をうたう。10首目、12月22日付の本欄に載った岩部博道さんの作「歌人に悪人なし」説に寄せて、と注記あり。
永田和宏選
笑ってるとはかぎらないにん…
