写真・図版
パキスタン南部シンド州で2010年10月5日、米国際開発局(USAID)が寄付した防水シートを張ったテントの前に立つ少年=ロイター
  • 写真・図版

ニコラス・クリストフ

 世界で最も金持ちの人物が、世界中で最も貧しい子どもたちの命を救っている米国際開発局(USAID)を破壊したことを誇り、「木材粉砕機に押し込んでやった」と豪語している。

 私の計算では、イーロン・マスク氏の純資産は地球上の最貧困層10億人の総資産を上回っている。ドナルド・トランプ氏の大統領当選以降だけでも、マスク氏の個人資産は、連邦予算の1%にも満たないUSAIDの年間予算全体をはるかに上回る規模で増えている。

 マスク氏やトランプ氏のような意気揚々とした億万長者たちが子どもたちを医療から切り離すのは非情なことだ。しかし、1961年にジョン・F・ケネディ元大統領がUSAIDの設立を提案した際に指摘したように、それは近視眼的でもある。ケネディ氏は、援助を削減することは「悲惨な結果をもたらし、長期的にはより高くつく」と指摘した。さらに「我々自身の安全が危険にさらされ、繁栄が脅かされることになる」と付け加えた。おそらくそれが、ロシアがトランプ氏の動きを称賛する理由だろう。

「再編」ではなく「解体」、米国への打撃大きく

 ケネディ氏とは対照的に、トランプ政権は残虐さと無知、近視眼を織り交ぜており、その組み合わせは米国の人道支援への攻撃において特に顕著に表れているように見える。

 米国ではすでに鳥インフルエ…

共有