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ヤマビワソウのタネをカマドウマが運んでいることが明らかになった=イラスト・安斉俊さん
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 タネの「運び役」を担っていたのは鳥ではなく、虫だった――。奄美大島や沖縄などに生える低木「ヤマビワソウ」のタネをバッタの仲間のカマドウマが食べて運んでいることを、神戸大などのチームが明らかにした。虫が食べることでタネが運ばれる植物は、国内では光合成をしない種など限られた例しか知られていなかったが、これまで考えられていたより虫が普遍的な運び手である可能性があるという。

 神戸大の末次健司教授(植物生態学)らは、イワタバコ科の低木で、奄美大島から東南アジアの薄暗い森の中に生えるヤマビワソウに注目。これまでタネは鳥によって運ばれるとされていたが、果実は葉っぱに隠れて上からは目立たないうえ、熟すと地面に落ちるため、末次さんらは飛んでいる鳥に見つけてもらうには不利なのではないかと疑問を持った。

 ヤマビワソウのタネは直径0.3ミリ程度と極端に小さく、白っぽい果実の中に詰まっている。こうした特徴は、昆虫によってタネが運ばれるギンリョウソウなど、光合成をしない植物のものに似ていた。

 「ヤマビワソウも、昆虫がタネを運んでいるのではないか」。そう読んだ末次さんは、奄美大島で、実がなったヤマビワソウを50秒間隔で約644時間撮影した。やってきた生きものを調べると、カマドウマの仲間が約720回来ており、果実を食べる様子も確認できた。

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