記者解説 アメリカ総局員・榊原謙
米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は9月18日、基準となる「政策金利」の引き下げを決めた。利下げは約4年半ぶり。新型コロナ禍の初期にゼロ金利まで急激に下げて以来となる。米国の金融政策は転換点を迎えている。
利下げの背景には物価高(インフレ)が、ようやく落ち着いてきたことがある。
コロナ禍前までは長らく物価は上がりにくかった。それだけに2021年春以降に過熱したインフレは米経済には不意打ちだった。代表的なインフレ指標の米消費者物価指数(CPI)は、22年6月には約40年ぶりとなる前年同月比9.1%上昇を記録した。
歴史的に各国の政府は金利を下げる緩和的な金融政策を求めがちだ。国民の暮らしを左右する物価を安定させるため、主要国では政府から独立した中央銀行が金融政策を担ってきた。
FRBは22年3月、インフレを抑制すべく政策金利の引き上げに着手。段階的に利上げし、23年7月には01年以来となる5.25~5.50%のピークに達した。
政策金利が高くなると銀行の貸出金利も高くなる。企業や消費者は投資や消費をしづらくなり、景気を鈍化させて物価高を冷ます。エネルギー価格の下落もあり、CPIは昨夏には3%台に戻った。
FRBはその後も、人手不足が深刻だった雇用環境を落ち着かせる狙いもあって政策金利を高水準で維持。CPIは今年7月に2%台に下がり利下げが視野に入った。
8月、FRBのパウエル議長はこう宣言した。「時は来た」
ポイント
米国では物価高(インフレ)が一服したとして、政策金利が9月に引き下げられた。大統領選でトランプ氏とハリス氏のどちらが勝ってもインフレ圧力が強まりかねない。日本の政権は円高リスクに対応しつつ、賃上げや成長分野への投資に取り組むべきだ。
利下げは株式市場や企業業績…