認知症になっても、社会とつながり、地域に貢献したい――。そんな認知症の人の思いを出発点に、様々な社会参加活動をするデイサービス(介護保険の通所介護)事業所がある。一般的なデイとの違いは、介護サービスの時間中に施設の外に出て洗車や清掃といった有償ボランティア活動に取り組んだり、地域の人々と交流したりする点だ。「社会参加型」デイのメニューは進化し、多彩になっている。

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カレーショップBLGの「店長」水野秀司さん(右)と「料理長」の窪木巌さん

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 「デイサービスがカレー屋さんをやるよ!」

 東京都八王子市のシェアキッチン&シェアスペース「まちはぐ」前。午前11時半、カレーショップ開店を知らせる看板が掲示された。

 市内のデイサービス「DAYS BLG! はちおうじ」を利用する認知症当事者とスタッフらが月2回、お昼時に運営するカレーショップだ。

 「キーマカレー、食後にアイスコーヒーですね。かしこまりました」

 テーブルをまわって注文をとるのは「店長」の水野秀司さん(62)。大手ファミリーレストランで店長も務めたキャリアがある。昨春、認知症と診断された。

 水野さんは「接客の仕事が好きでしたから、やっぱりいいですね」と笑顔で話した。

「もう一度お客さんの前に立ちたい」

 調理場に立つのは、かつて飲食店を営んでいた「料理長」の窪木巌さん(78)だ。

 カレーショップを始めたのは昨年9月。デイサービス代表の守谷卓也さんが、「もう一度お客さんの前に立ちたい」という水野さん、窪木さんの思いを知ったのがきっかけだった。地域包括支援センターの職員や大手製薬会社の社員なども、助っ人として協力している。

 2017年の設立以降、「DAYS BLG! はちおうじ」はコミュニティーペーパーのポスティングや自動車販売店での洗車といった有償ボランティア活動を積極的に取りいれてきた。謝礼は、メンバーに公平に配る。「やりたくない」活動に無理に参加する必要はない。

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店頭に並ぶ車を丁寧に磨く「DAYS BLG! はちおうじ」のメンバー=6月、東京都八王子市のホンダカーズ東京中央U-Select八王子

 メニューは年々広がる。市の図書館にメンバーが出向き、案内表示など認知症当事者が利用しづらいと感じた点について意見を伝える。そんな当事者参加の活動にも関わった。

 一例として、認知症関連書の…

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