大手レコード会社のソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)には、所属するアーティストらが心の不調を感じたら、気軽に専門家に相談できる仕組みがある。業界では珍しい取り組みで、昨秋から他社にも提供を始めた。背景には、SNSなどを通してアーティストにネガティブな意見が直接届きやすくなり、メンタルケアが大きな課題となってきたことがある。

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B-sideプロジェクトを発足させたソニー・ミュージックエンタテインメントの徳留愛理さん(右)と、日本音楽制作者連盟の野村達矢理事長=2025年1月17日、東京都千代田区

 SMEが2021年秋に始めたこの取り組みは「B―side」と名付けられた。レコード会社として、アーティストの「A―side(表に立つ自分)」だけでなく、「B―side(普段の自分)」もサポートしようという思いが込められている。SMEグループと契約しているアーティストや俳優などのほか、その人たちと直接仕事をするスタッフも支援対象だ。

 具体的には、臨床心理士や公認心理師らによる面談でのカウンセリングを受けられる支援が柱で、心身に関する不安に医師がオンラインで24時間・365日相談にのる外部のサービスなども利用できる。

 いずれのサービスも無料で、匿名でも利用できる。相談内容はSMEにも知らされず、本人と相談を受けた専門家らのみで共有される。

 SMEによると、アーティストに対するメンタルケアの取り組みは海外では例があるが、国内では珍しいという。

 このプロジェクトを立ち上げたのは、SMEのグループ会社で30年近くアーティストのマネジメントを担当してきた徳留愛理さんだ。

 かつてはアーティストのメンタルケアは本人のマネジャーが担うのが「業界の常識」だった。だが徳留さんは「マネジャーがケアを全てやるのは限界が来ている」と感じていた。

 理由の一つがネットやSNS…

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