東京都内でこの夏、30年以上続いた診療所が閉院した。ドアの貼り紙には、このような内容が書かれていた。

 政府が保険証の廃止を決めたため、診療は続けられません――。

写真・図版
診療所があったビルには、閉院を知らせる貼り紙があった=2024年11月14日、東京都内、岩波精撮影

 閉院から数カ月。男性医師は看板をおろした診療所で連日、自分を頼ってくれた患者たちのために紹介状を書き続けている。

 政府は12月にも、紙の保険証の新規発行を停止し、「マイナ保険証」に一本化する方針を示している。閉院を決めた理由を詳しく聞きたい、と男性医師に取材を申し込むと、「手紙でなら応じられる」と返答があった。

 本人の許可を得て、手紙の内容から経緯や思いをたどる。

 男性医師は、内科や外科など…

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