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赤外線撮影されたキトラ古墳の壁画「青竜」。頭部や胴体の一部が確認できる=文化庁提供
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 奈良県明日香村のキトラ古墳(特別史跡、7世紀末~8世紀初め)に描かれた国宝壁画「青竜」について、泥に覆われた背中や尻尾などの輪郭線の一部が、最先端の赤外線撮影で初めて確認された。文化庁の古墳壁画の保存活用について議論する検討会で27日報告された。

 石室東壁に描かれた青竜は、石室内に流れ込んだ泥に表面が覆われ、頭部や舌先、前脚の一部以外は肉眼で見ることが出来ない。過去2回の赤外線撮影では、泥の下の胴体部分はほとんど確認できていなかった。

 今回、奈良文化財研究所(奈文研)は波長が長く、透過力の高い赤外線による撮影に挑戦。青竜の胴体や首、背中、尻尾の一部の輪郭線が確認できたという。石室の西壁に描かれた白虎と、形がよく似ていることもはっきりした。

 青竜は、古代中国思想で方角や季節のシンボル「四神」の一つで、東の方角をつかさどるとされる。中国では西の方角の白虎とセットで描くケースが多い。「飛鳥美人」で知られる高松塚古墳(特別史跡、7世紀末~8世紀初め)でもセットで描かれ、下絵には同じ見本が使われたとみられている。

 調査した奈文研飛鳥資料館の石橋茂登・学芸室長は「キトラの青竜と比べると、高松塚の方が全体的に細長く、舌の長さなども微妙に異なるように見える。もし同じお手本を使っていたのなら、画師の技術や個性の差が出たのかもしれない」と話す。

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