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教育社会学者の多賀太・関西大教授

 分けるか交ぜるか、それが問題だ――。

 男女別学の公立高校が全国で最も多い埼玉県で、共学化推進の方針が決まった。ジェンダー平等意識の浸透や少子化による統合などで、別学校は全国的に減っている。一方で、選択肢の多様性確保などを理由とした維持論も根強い。

 男子高や女子高は反時代的存在なのか、まだ存続すべき意義があるのか。トップ進学校や伝統校に別学校が集中していることによる弊害はないのか。とかく議論が混線しがちの別学・共学論争。教育社会学者の多賀太・関西大教授に、論点や課題を交通整理してもらった。

共学イコール男女平等か?

 別学か共学かという論争は従来、平行線をたどりがちでした。それは見解の相違以前に、論者によって性やジェンダーへの価値観、教育の目標、効果、方法などの関心や議論の照準がバラバラだったことが一因です。要は別々の土俵で戦っていたようなものです。

 この問題の議論は、何のための別学・共学なのかという根本の問いに常に立ち返る必要があります。

 「男女七歳にして席を同じうせず」という儒教の教えの信奉者や、逆に男女を分けること自体が差別であり不自然だという信念から共学を支持する人が重視しているのは、倫理観です。ただ、現在の別学・共学論争で多くの人が最大の関心を向けているのは、むしろ教育効果でしょう。それも、人格形成、学業達成、成人後の役割のいずれの目標に対する効果なのか、ふわけして論じる必要があります。

 その上で現在の状況と課題を…

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