夏ソバの種まきが進んでいる=2024年4月22日、福井県越前市、永井啓子撮影
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 「越前おろしそば発祥の地」とされる福井県越前市のJA越前たけふが今年、初めて夏ソバの栽培に取り組む。市内の飲食店でつくる組合とも連携し、これまでの秋に加え、夏にも新そばを楽しんでもらいたいという。収穫期を年2回にすることで、農家の所得を増やす狙いもある。

 栽培する品種は「キタワセソバ」。JA越前たけふ管内の越前市と南越前町の農業法人・個人16軒が計35ヘクタールで作付けする。種まきを4月中旬から始めており、6月下旬~7月上旬に収穫。JAの施設で一括して乾燥・管理し、8月にかけて武生麺類業生活衛生同業組合の加盟店などで提供する計画だ。夏向きのさっぱりとした味わいだという。

 同JAによると、水田を転用し秋ソバだけを作っている圃場(ほじょう)は管内に約70ヘクタール。秋ソバの種まきは8月のため、その前に夏ソバを栽培・収穫することで新たな収入が見込めるという。

 収穫用のコンバインは高額なため、JAがオペレーター付きで貸し出して、農家が取り組みやすくする。収穫時期が梅雨にあたるため、排水対策なども助言していくという。

 夏ソバは福井市や坂井市でも作られているが、多くが県外に出荷され、県内で食べる機会は少ないという。

 越前市役所で22日、関係者による会合が開かれ、同JAの土本俊三組合長は「水田をフル活用する取り組みで、おろしそば発祥の地をアピールしていきたい」と語った。同組合の金子康幸組合長は「北陸新幹線も(県内で)開業した。夏と秋の2回、新そばが食べられるというキャッチフレーズを行き渡らせたい」。栽培する農事組合法人「ファーム広瀬」の畠中崇宏副組合長は「土づくりをしっかりして頑張りたい」と話した。(永井啓子)

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 「日本一おいしい」といわれる福井のそばを世界一に――。福井県越前市の製麺所「宗近」が5月11日午前9時半から、おろしそばの販売数でギネス世界記録を目指す。会場はJR福井駅西口のイベント広場「ハピテラス」。北陸新幹線延伸でにぎわう福井の玄関口で、「ソウルフードを世界にPRしたい」と意気込む。

 ギネスには現在、「そば販売」のカテゴリーはなく、ギネスワールドレコード社から示された達成条件は「8時間以内に2500杯以上」という。

 おろしそばは通常越前市の製麺所隣接の食堂エリアで690円だが、ギネス挑戦当日は350円(いずれも税込み)で提供する。よりお得に食べられる5枚と10枚のつづり券(各1600円、3千円)も販売する。1時間に最大650杯を提供できる態勢で臨み、4千杯分を用意するという。啓新高校(福井市)のそば部員9人も調理に協力する。

 ネットメディア「ねとらぼ調査隊」が行った「そばがおいしい都道府県」の調査で、福井県は2024年まで4年連続1位に選ばれている。ギネス挑戦は、高評価のそばを多くのファンに味わってもらい、世界記録に残そうと企画したという。

 宗近4代目の宗近鉄也専務は「県民一丸となって達成し、みんなの記憶に残る体験となれば」と話す。(永井啓子)

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