- 連載「M&A仲介の罠」はこちらから
後継者不在の中小企業を売り買いするM&A(企業合併・買収)が増えるなか、買った会社を食い物にするようなトラブルが次々と判明している。国や業界団体が対策を打つが追いつけず、不穏なM&Aを仕掛ける動きが今も続いている。
東京都府中市の築40年超の集合住宅に9月、78歳の松村民雄さんが一つ下の妻と移り住んだ。週3日のパートで羽田へ通い、空港施設の保安検査員として働く。30人超が働く設計会社の創業社長だったかつての生活は、M&A仲介業者を通じて会社を譲渡したことで一転した。
ついのすみかも売却へ
M&A仲介業者とは、会社の売り手と買い手をマッチングして引き合わせ、株式譲渡の手続きなどをサポートして報酬を得るビジネス。不動産売買を仲介する不動産業者の「会社版」のようなもので、買い手と売り手の双方から報酬を得る仲介業者に加え、どちらか一方の支援に注力する金融アドバイザー(FA)が関わることもある。
松村さんも後継がなく、銀行…