写真・図版
完封した大阪桐蔭の中野大虎

 (6日、秋季高校野球大阪府大会準決勝 大阪桐蔭3―0大阪学院大)

 「自分たちは、強くない。力がない」

 8月下旬。新チームになった直後、大阪桐蔭の選手たちだけで開いたミーティングで、主将に就いた中野大虎(2年)は、厳しい言葉を仲間に伝えた。

 1年生から主力の中野は2季連続で甲子園を経験した。だが、「最近、大阪桐蔭は負けている」と語る。

 今春は選抜大会、府大会がともに準々決勝敗退。2年ぶりに出場した今夏の全国選手権は、2回戦で完封負けした。大舞台に立つ喜び以上に、「敗北」の悔しさの方が強かった。

 その思いは、西谷浩一監督も同じだ。中野が新主将になった際、「やっぱり勝ちたい。勝てるチームを作ろう」と伝えた。「日本一を取りに行こう」と。

 最大の目標に向け、中野はこの日、圧巻の投球を見せた。

 球速150キロに迫る直球を軸に、打者の懐をどんどん攻めた。三回は2死満塁のピンチを背負ったが、相手の4番を外角の直球で見逃し三振に退ける。拳を握り、さけんだ。

 最後まで投げきり、127球、被安打5で完封した。疲労感を見せず、「まだ燃えています」。攻撃中はベンチから声を張り上げ、周りを鼓舞した。

 背番号は7。エースナンバーは、1年生から競い合う最速150キロ超の右腕、森陽樹(2年)に譲る形になったが、中野本人は意に介さない。

 「大阪桐蔭に入ってから背番号にこだわりがない。試合に出て抑えたらいい、勝ったらいいという思いでいる」

 チームは春に負けた大阪学院大にリベンジを果たし、11年連続で近畿大会出場を決めた。

 決勝に向けて、西谷監督は「1位で(近畿に)行きたいという気持ちでやりたい」。

 前人未到の秋の大阪6連覇まで、あと1勝だ。(室田賢)

共有