東京電力福島第一原発の廃炉に向けた作業で、最難関と言われる溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の試験的な取り出しが10日、始まった。当初計画からは約3年遅れ。政府は、2051年までの廃炉完了をめざす工程の最終段階に入ったと説明するが、燃料デブリをすべて回収できるめどは立たず、廃炉の姿は描けていない。
- 【そもそも解説】ミスで作業中止、燃料デブリの取り出しは難しい?
日本原子力学会の宮野広・廃炉検討委員長は「大変なのはこれから」と指摘する。
今回取り出す燃料デブリは3グラム以下。非常に少ないため、「もっと大きな塊でデブリを取り出せる方法を開発できなければ、取り出しに何年かかるかが計算できない。現状では、51年の廃炉ができるかどうか、話にもならない」と語る。
政府と東電は51年までの廃炉完了をめざす。工程表では、廃炉作業の期間を3段階に分け、燃料デブリ取り出しの開始から完了までを最後の「第3期」と位置づける。林芳正官房長官は10日の記者会見で「今回の着手で工程表の第3期に移行した。国として、安全かつ着実な廃炉に向けて最後まで責任をもって対応する」と述べた。
燃料デブリの試験的取り出しは8月22日に予定されていたが、装置をつなぐ順序が誤っていたことがわかり、延期されていた。この日は、午前6時半過ぎから、2号機の原子炉建屋での作業を開始。放射線量が高いため、総勢62人の作業員が交代で作業にあたり、原子炉格納容器の真横にある「隔離弁」の先まで燃料デブリの取り出し装置を入れたという。
装置は最長約22メートルま…