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2023年12月にオープンした「リバイブジム」には自身のリハビリを支えた器具を導入したという上野遥介さん=2024年12月7日、大阪市西区北堀江1丁目、松浦祥子撮影
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 若者向けの店が立ち並ぶ大阪市ミナミの繁華街・アメリカ村のほど近く。細い通りに面したガラス張りの建物をのぞくと、青い器具が並ぶジムがある。杖を使って歩く若い男性が一歩ずつ、ゆっくりと中に入っていく。このジムのオーナーだ。夢を絶たれても、立ち上がり続けてきた男性の願いが、そのジムの名前に込められている。

 大学1年の冬の夜。友人が運転する車で、上野遥介(ようすけ)さん(29)は、うとうとしていた。大きな衝撃を受け、後部座席で目を覚ました。眼前には、バリバリに割れたフロントガラス。夢かと思い、唇をかんだら痛かった。「まずい」。車から出ようとしたが、体が動かない。

 自損事故だった。シートベルトをしていたが、首を骨折し、脊髄(せきずい)を完全損傷した。京都・鳥羽高校の野球部出身で、通算21本塁打を放つスラッガー。3年生では夏の京都府大会で準優勝。スポーツ推薦で大学に進学し、プロ野球選手を目指す最中、夢がついえた。

 事故後、病室のベッドで、首を少しでも動かすと手指に電気が走ったかのような激痛が走った。「助けてくれ」。あまりの苦痛に、看護師や家族を怒鳴りつけてしまうこともあった。ライバルたちは普通に野球をしているのに、なぜ自分だけがこんな目に遭うのだろう。未来が真っ暗になり、目を閉じるのも怖かった。

 そんな中、家族は、痛みが少しでも和らぐよう、ひたすら体をさすった。事故から2カ月で面会が可能になると、恩師や友人が見舞いに来てくれた。何げない会話が楽しい。差し入れのシュークリームがおいしい。

 希望を失っていたはずなのに…

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