「このYOASOBIの最新インタビューは、日本のポピュラー音楽における転換点を象徴する貴重な証言として特筆に値する内容です」
11月7日配信の記事「YOASOBIが語る 『1位』にこだわった理由と、Jポップの誇り」に、ジャーナリストの松谷創一郎さんは、こうコメントした。
記事は、世界に活躍の場を広げる音楽ユニット「YOASOBI」へのインタビュー。作曲・作詞を手がけるAyaseさんとボーカルのikuraさんが、「ヒットチャートとの向き合い方」や「Jポップの可能性」などを語った。
松谷さんが注目したのは、Ayaseさんがヒットチャートに強いこだわりを示した点だ。Ayaseさんは、数字は「本質的には音楽をやる理由ではない」としつつも、ビルボードの日本国内ランキングで前年まで2年連続2位だったため「やっぱり今年こそは絶対に1位を取らないと前に進めない」と思っていたと明かした。松谷さんは、そこに「現代のアーティストと音楽チャートとの健全な関係性」が如実に表れていると指摘した。
その背景には、日本のポピュラー音楽の「失われた10年」があったという。松谷さんによると、2006年から15年ごろにかけて音楽メディアは急速な変容を遂げ、ダウンロード配信やYouTube、ストリーミングサービスが普及。一方、従来のオリコンランキングはCDの売り上げを重視して「音楽の人気を測る指標としての機能を著しく失っていきました」と指摘した。
その時期、握手券とセットで複数枚のCD購入を促す「AKB商法」などが一定の成功を収めたが、「それは同時にチャートそのものの信頼性を大きく損なう結果」を招いたという。
その後、YouTubeなど複合的な指標を採り入れた「ビルボードジャパン」が台頭した。この新しいメディア環境にもっとも適応したのがYOASOBIだったという。
松谷さんは「彼らの成功は、『失われた10年』からの脱出を象徴する、極めて重要な出来事として位置づけられるのです」と、その意義を強調した。
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