半導体製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)は9日、熊本大、熊本県立大の2大学と、それぞれ産学共同研究プロジェクトを始めると発表した。地下水保全に向けた研究に資金を拠出し、成果を環境保全活動などに生かしていくという。
半導体製造は、全体の3~4割を洗浄工程が占めるとされ、大量の水を使う。TSMCの生産子会社のJASM(菊陽町)も、年内に本格稼働する第1工場で年間310万トン、第2工場は同約500万トンの地下水を採取する計画を示している。
TSMCは環境を保全しながらものづくりを続けるため、「水資源」「気候変動」「大気汚染」「廃棄物管理」の4分野について、工場が進出する日米中などで産学共同研究を進める構想を掲げている。
熊本での取り組みはその第1弾になる。2大学とは3年間の契約で、地下水に関する共同研究を進める。同社は資金のほか、JASMを通じて、工場敷地内の井戸の状況などデータも提供する。
熊本市内で9日に開かれた発足式で、JASMの堀田祐一社長は「地下水は熊本の宝。皆さまと一緒に守っていく」とあいさつ。工場でも水量や水質を常に監視し、過剰な採取を防ぐ取り組みをしていると強調した。
TSMCで技術研究ディレクターを務めるマービン・チャン氏は「熊本での(共同研究の)成果が世界に広がることを期待している」と話した。(渡辺淳基)