総務省の看板=東京都千代田区

 SNS上で著名人らになりすましてお金をだまし取る詐欺広告が相次いでいる問題で、政府はSNSを運営するプラットフォーム事業者にインターネット広告の事前審査基準の策定・公表などを義務づける検討に入った。米メタなどの大手を念頭に置いており、法制化も視野に入れる。

 ネット上のうそや誤った情報の対策を話し合う総務省の有識者会議で30日、作業部会が論点として示した。事業者による広告の審査基準や掲載後の停止基準の策定・公表のほか、掲載停止の申請窓口の整備などの義務化について、今後の会議で議論を進める。対象については、ユーザー数や広告閲覧数など「一定の要件を満たす大規模な事業者」を案にあげた。

 SNS上の詐欺広告を巡っては、「詐欺的な方法を用いた製品の宣伝禁止」(メタ)や「虚偽・詐欺的コンテンツの掲載禁止」(X)など、各事業者がそれぞれ規定を設けて審査や削除に取り組んでいるとされるが、そうした広告の一部は表示され続けている実態がある。これまでの有識者会議でも事業者の対応の透明化を求める声があがっていたほか、今月24日には自民党が法規制を含む対策の検討を政府に求める提言をまとめた。

 30日の会議では、うそや誤った情報の拡散を抑止するための対策についても論点を提示した。「対応を検討すべき偽・誤情報」の定義を、「検証可能な誤りを含むもの」とした。その上で、「違法性・権利侵害性・客観的な有害性」や「社会的影響の重大性」などの程度で対応を検討することが適当だとした。

 事業者による情報の削除やアカウントの停止などの義務化の是非にも触れる一方で、「過度な削除や停止、投稿者の表現の自由への制約をもたらすおそれがあることなどから慎重であるべきとの考え方があり得る」とした。

 作業部会で論点のとりまとめにあたった山本龍彦・慶応大院教授は「情報空間の課題を克服する必要性と、政府・国家の過剰介入をいかに抑止し、表現の自由を確保する必要性があるかの双方をにらみながら適切なバランスをどう確保するかの視点を忘れずに議論してきた。今後も様々なステークホルダーの意見を踏まえ、そのような視点で議論していく」と語った。有識者会議では新制度の創設も視野に議論を進め、今夏をめどに報告書をまとめる予定だ。(黒田健朗)

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