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森下俊三・NHK経営委員会前委員長=2021年
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記者コラム 「多事奏論」 編集委員・後藤洋平

 かんぽ生命保険の不正販売報道を巡り、NHK経営委員会が当時の会長に厳重注意したのは放送法が禁じる経営委員の番組への介入に当たるとして、市民らが経営委議事録の開示を求めた訴訟は、NHK側が開示に応じることなどで東京高裁で和解した。言い分がほぼ認められた原告側は「画期的な解決」と評価している。

 2018年4月、「クローズアップ現代+」がかんぽ生命保険の販売手法を巡り「詐欺まがい」「押し売り」などと報じると、親会社の日本郵政幹部がNHK側に抗議。経営委はこれに同調して上田良一会長(当時)にガバナンス上の問題があったとして厳重注意した。議事録によると、主導したのは当時委員長代行だった森下俊三前委員長。番組について「極めて稚拙」「(スタッフが)現場へ行っていない」「うのみにしてインターネットの上だけで番組を作っている」などと発言。NHKは郵政側への事実上の謝罪に追い込まれ、続編番組は最初の放送から1年3カ月以上も後になった。

 かんぽ生命の販売に重大な問題があった事実はその後、日本郵政も認めた。だが、NHK幹部は否定するものの日本郵政からの抗議で続編の報道が影響された可能性や、放送法32条が定める経営委員による個別番組の干渉禁止の違反を大きく疑わせることなど、他にも様々な問題を感じさせる出来事だった。今では経営委の厳重注意自体が「不正」とも取れるが、経営委は現在も取り消しなどをしていない。

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