NHK放送センター=東京都渋谷区
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 NHKの将来を左右する改正放送法が5月に成立しました。NHKの同時・見逃し配信、文字ニュースなど、放送番組と密接にかかわる「番組関連情報」のネット配信が「必須業務」になりました。総務省の有識者会議のメンバーとして議論にかかわった、電通総研名誉フェローの奥律哉さんは、NHKのネット配信を制限する形となった改正の問題点を指摘しています。

ネット時代の発信、十分か

 ――今回の改正によって、一次情報をネット上に発信することが期待されています。一方で、これまで任意で提供してきた「政治マガジン」など放送番組の内容を超える文字情報は廃止されることが決まりました。改正をどのように評価していますか。

 「改正には留意すべき点があると考えています。一つはユーザーにとって情報量の減少につながりかねないという点です。『政治マガジン』などの文字情報の配信を巡っては、受信料で成り立つNHKがネット上で無料コンテンツを大量に配信すれば、民業圧迫の恐れがある、と日本新聞協会などが批判していました。そうした声を受け、NHKは改正にあわせて、ネット独自のコンテンツはつくらないことを表明しました。それではネット時代に対応したNHKの発信としては十分とはいえません」

 ――「十分ではない」と考える理由はなんでしょう。

 「今は、ユーザー自身も発信ができる時代で、それらをシェアできるようになったことに加え、生成AIによって大量の偽・誤情報が生み出され、社会が大きく混乱する可能性もまた指摘されています。こうした中で、一次情報を取材して、出どころもわかる正しい情報が、まず情報空間に存在しないと、偽・誤情報に対応できません」

 「民間事業者にはそうした対策をとる余裕がないからこそ、受信料で安定した財務状況をもつ、NHKに先駆的に取り組んでもらうようにしたほうがいい。にもかかわらず、今回の議論は、独自の文字情報を自由に発信することを制限する形になり、ネットで配信する情報は、テレビでの放送が前提となりました。ただ、テレビ番組由来の動画や文字情報をそのまま配信しても、ネット上では流通しにくい。本来は、視聴デバイスの環境にあわせた時間の長さや表現構成、そしてオリジナルの情報も欠かせないはずです」

放送市場は淡水と海水が混じり合う汽水湖

 ――どういうことでしょうか。

 「この春、元テレビ東京で…

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