写真・図版
NHK放送センター=東京都渋谷区

 NHKの稲葉延雄会長は12日の定例会見で、局内で旧ジャニーズ事務所(SMILE(スマイル)―UP(アップ).)の創業者、故ジャニー喜多川氏から性被害を受けたとする男性の証言について、その時期が2002年秋ではなく、01年である可能性があることを認めた。その上で、「被害があった信憑(しんぴょう)性は変わらない」と強調した。

 同局は23年10月のニュース番組で、02年秋に東京・渋谷のNHK放送センター内のトイレで、喜多川氏から性被害にあったとする男性の証言を報じた。この証言によると、男性はジャニーズJr.が出演していた「ザ少年倶楽部」に出演を希望し、放送センター内のダンスの練習に参加。会場に来ていた喜多川氏から声をかけられ、男性用トイレの個室で下着を脱がされ、性被害を受けたと番組で伝えた。

 その後、性加害問題の補償を進めているスマイル社が、男性に対して、損害賠償の義務がないことの確認を求めて千葉地裁に提訴。男性が被害を申告した時期に喜多川氏が海外渡航しており、説明も変遷していることなどから、「申告内容の確からしさを確認できない」と主張した。10日の第1回弁論で、男性側は同社側の請求を受け入れる「認諾」を表明して訴訟は終結した。

 NHKも取材などの結果、被害時期に疑義が生じたという。

 稲葉会長は「スマイル社側の主張やその後の取材などを踏まえて、より慎重な伝え方が必要だった」と言及。一方で、男性の証言が一貫していることなどから、証言の信頼性は変わらないとしている。

 また、NHKは旧ジャニーズ事務所との関係性の検証について、第三者委員会を設置せず、報道による検証を行っている。第三者委の調査にしなかったことについて問われると、稲葉会長は「報道の現場で起こったことについては、報道自らが改善すべきだ」と従来の主張を繰り返した。

共有