8月中旬、富士山北側の河口湖と5合目を結ぶ山梨県の有料道路「富士スバルライン」を走る路線バスに乗った。運転席近くまで乗客で埋まる満席状態。英語などの外国語が飛び交う車内はにぎやかだった。
片側1車線の道を1時間15分で上る。終点の5合目は、リュックを背負った登山客であふれていた。
5合目の電気は自家発電。水道はなく、水はタンクローリーで運ぶ。ごみ箱はなく、持ち帰るべきごみがトイレに捨てられ、10袋分ものごみが見つかる日もある。
インバウンド(訪日外国人客)の拡大などで年々ひどくなる富士山のオーバーツーリズム(観光公害)問題に、周辺自治体は悩みを深めてきた。その打開策にと期待されたのが、次世代型路面電車(LRT)だった。
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名峰マッターホルンを眺めながら標高約3千メートルまで上るスイスの登山鉄道を富士山にも――。山梨県が2021年に公表した「富士山登山鉄道構想」では、富士スバルラインに軌道を敷き、マイカーやバスは通れなくする。代わりにLRTを通し、富士山への登山客を5合目まで運ぶ「未来図」を描いた。
登山客の交通手段をLRTに限ることで、マイカー規制や入山料の徴収では不十分だったオーバーツーリズム対策の「切り札」にする。山梨県がそう考えたのには理由があった。
「課題解決のアイデア」に地元から反発
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