朝日新聞宇都宮総局は14日、取材テーマについて記者と読者が語り合う記者サロン(講演会)を開いた。テーマは、次世代型路面電車(LRT)など、各地で進む路面電車の新たな可能性。朝日新聞デジタルA―storiesで「路面電車新時代」を連載した石原剛文記者が約20人の参加者と意見交換した。
宇都宮市―栃木県芳賀町間のLRTは開業から1年が過ぎ、利用者が想定より約4カ月早く600万人に達した。2030年にはJR宇都宮駅西側路線の運行を目指す中、注目されている東武宇都宮線との連携について石原記者が解説。同線のLRT化やLRTの東武への乗り入れ、動く歩道などの連携案について説明した。
さらに、各地で進む路面電車と街づくりの関係性を紹介。戦前の県営鉄道の復活を目指し、渋滞対策に生かそうとする沖縄県の事例のほか、路面電車を駅ビル2階の屋内停留場に乗り入れるとともに、街の拠点を結んでにぎわいにつなげようとする広島市の例を挙げた。
また、富士山の有料道路を路面電車化して来訪者を制限し、オーバーツーリズム(観光公害)対策に取り組もうとする山梨県の事例もとりあげた。地元の反対などからLRT化を断念、タイヤ式の交通システムに変更し、リニア中央新幹線開業をにらんだ構想についても解説。海外の事例では、交通政策に詳しくオーストリア在住経験のある宇都宮浄人・関西大学教授への取材をもとに、市民生活への浸透と利便性について写真や動画とともに紹介した。
路面電車の移動手段を超えた役割について「人口減少や高齢化社会の中、利便性とコストパフォーマンスについても考えながら、今後も取材を進めていきたい」と石原記者。講演会への参加者からは「西側の車線が減ると渋滞が起きるのではないかと心配」「市にLRTを拡大する方針はあるのか」「距離を伸ばして利便性をよくすることを考えていく必要がある」などの意見や質問が出た。