死亡した男性が見つかった電車の運行状況
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 今年5月11日朝、JR渋谷駅(東京都)から電車に乗ったとみられる男性が約12時間後、JR小田原駅(神奈川県)に着いた電車内で亡くなっているのが見つかった。男性の妻(49)が朝日新聞の取材に応じた。元気に家を出た夫が、なぜ。誰かが、もっと早く気づけなかったのか――。

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 「いってきます」。11日午前7時40分ごろ、東京都内の自宅で、妻は男性が出ていく声を聞いた。栃木県の小山駅で友人と遊ぶと、あらかじめ聞いていた。

 結婚して15年。毎日、仕事に向かう夫を玄関先まで見送っていた。「いつ地震や事故に巻き込まれるか分からない。いつも最後の姿と思って目に焼き付けたい」。そんな思いからだ。

 ただ、この日に限って、体調が悪くて玄関に行けず、見送ることができなかった。

 午前8時36分、電車に乗っているはずの夫にLINEのメッセージを送った。

 「安くなってよかったね」

 前日夜、電力会社を変えて料金が安くなったというメッセージが来ていた。その返信だった。

既読にならないLINEメッセージ 募る不安

 いつも通りのやり取り。既読になることはなかった。

 昼すぎ、夫が友人との待ち合わせ場所に現れていないことを義理の父から聞いた。

 「夫はたしかに家を出ましたよ」「もし倒れていたら、病院から連絡があるだろう」

 義父とそんなことを話し合ったが、時間が経つにつれて、不安は募っていった。

 LINEで何度も通話を試みたが、つながらない。 警察に届け出ることも考えたが、夫がずっと電車に乗っているかどうか分からない。こんなことで連絡して迷惑に思われないか、と遠慮した。

 夜になり、小田原駅を管轄する神奈川県警から、心肺停止状態だと連絡があった。すぐには理解できなかった。あんなに元気だったのに。栃木県に向かっていたのに、なぜ神奈川県で。今日に限ってちゃんとあいさつもできていないのに。

渋谷駅から乗車したはずの夫 約12時間後に小田原駅で

 あまりに唐突だった…

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