羽田発着枠争奪戦 1枠20億円をかけて②

羽田発着枠争奪戦

5年ごとに迎える羽田空港国内線の発着枠をめぐる争奪戦。ドル箱の羽田路線は、航空各社の収益を左右するため、経営トップが火花を散らして議論します。方向性が固まる6月26日までの全4回でその様子を伝えます。

 羽田空港の発着枠の配分をめぐり、有識者委員会の場で日本航空(JAL)が主張したのは大きく二つだ。

 「羽田でのコードシェア廃止」

 「経営統合した会社は1社として再配分」

 コードシェアとは、2社以上の航空会社で飛行機を共同運航することだ。A社とB社が、B社の航空機を共同運航する場合、A社がその便の座席を一定程度買い取り、販売する仕組み。集客効率を上げ、運航コストの削減にもつながる。国内外で広く導入されている。

 ただ、JALが「廃止」を訴えるのはなぜか。その背景には羽田空港特有の事情がある。

夕日に染まった羽田空港に駐機する日本航空機=2024年5月9日、羽田空港第1ターミナル

 羽田では、多様な路線展開を促すため、新規参入社へ「枠」を優遇して配分するようにしてきた。現在も「特定既存航空会社」のスカイマークやエア・ドゥ、ソラシドエア、スターフライヤーの4社には優先的に枠が割り振られている。

 このうち、スカイマーク以外の3社は全日空(ANA)とコードシェアをしている。

 羽田でのコードシェアは、全座席の50%までという決まりがある。3社はANAに最大で全座席の半分を買い取ってもらっている(割合は非公表)。3社は安定的に座席の一部が埋まるため、収益の改善につながるというメリットがある。

 現在の羽田の配分枠はANA37%、JAL39%、スカイマーク8%、その他16%。だが、ANAがコードシェアで全座席の半分を売っていたという仮定のJALの試算では、ANA45%、JAL39%、その他8%になり、「実質的な使用枠数に乖離(かいり)がある」とする。

 本来、新規参入会社や特定既存会社を育てるために優遇されてきたにもかかわらず、ANAが寡占しているのではないか、という主張だ。

羽田空港付近を飛行するJALの機体=2022年10月31日、東京都大田区の羽田空港、角詠之撮影

 料金面においても、コードシェア便は、ANAの販売価格のほうが、3社が独自で売るよりも高くなっているとJALは指摘。ANAが座席を売ることで利用者はより高い料金で乗る確率が高まり、「国民に期待された役割を放棄している」と主張する。

 精緻(せいち)に評価・点数化された羽田の枠ではコードシェアの考えはそぐわないのではないかという考えで、JALの小山雄司経営企画本部長は検討委の場で「コードシェアそのものを否定しているわけではなく、競争阻害や地方の旅客拡大に一部障害が生じているのではないか、ということを申し上げた」と話した。

 また、JALは日本エアシステム(JAS)と経営統合した後の2002年、発着枠を12枠返上した経緯がある。そのため、持ち株会社を作ったソラシドとエア・ドゥは「1社」として枠を返すべきだとも主張する。

経営統合を発表する記者会見の冒頭、手を取り合う兼子勲・日本航空社長(左)と船曳寛真・日本エアシステム社長=2001年11月、東京都内のホテル

 第2回の検討会。JALの論調に賛同した上で、さらにほえる男がいた。スカイマークの洞駿(ほらはやお)社長だった。

 「全く同感でございます。少…

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