iPS細胞から卵子や精子をつくる。この技術が現実のものとなれば、病気などで不妊の人だけではなく、さらに広く、さまざまな目的で使われるようになるのかもしれない。

 2023年4月、米ワシントンDCの米国科学・工学・医学アカデミー(NASEM)に生殖生物学の研究者らが集まり、3日間のワークショップが開催された。

米国科学・工学・医学アカデミー(NASEM)のワークショップの一場面=NASEMサイト上の動画から一部を切り出し

 NASEMのウェブサイトでは、いまもワークショップの議論を動画で見ることができる。

 テーマは、「生殖技術としての、体外でつくるヒト配偶子」について。

 iPS細胞などから、ヒトの卵子や精子をつくる技術が治療に使われるとすれば、どんな状況か。法的・倫理的な課題はどこにあるか。そんな議論が交わされた。

 会議の直前の23年3月には、大阪大の林克彦教授が、オスのマウスの細胞から卵子をつくって子どもを誕生させることにも成功したと報告していた。

 この例を取り上げて、ワークショップ座長で米ブラウン大学のエリ・アダシ教授は「この最新の試みは間違いなく、これから十分に検討されるべき、規制上の、そして社会的な意味を持つことになるだろう」と述べた。

 オスのマウスだけから子どもをつくる。同じ手法をヒトにも応用すれば、男性の同性カップルのうち、1人の細胞から卵子をつくり、もう1人の精子と受精させることで子どもをさずかる。そんなことも可能かもしれない。

 女性の細胞から精子をつくる技術もあれば、同じことが女性の同性カップルでも考えられる。

 想像はさらに膨らむ。

 男性の細胞から卵子をつくり…

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