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2種の化合物を加えて培養したiPS細胞=理化学研究所提供

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)を、大量に高い品質でつくる方法を確立したと、理化学研究所などのチームが発表した。培養のコストを従来の方法の数分の1にできるといい、再生医療の産業化につながるという。

 iPS細胞は現在、培養皿の底にくっつけて培養する方法が主流だが、平面的にしか増やせないので、場所をとる割に得られる細胞の数が限られ、自動化も難しい。液の中に浮かせるようにして増やすと、こうした問題を解決できるが、一部が勝手に筋肉や神経などの元になる細胞に変化してしまうという欠点があった。

 チームは、細胞にこうした変化を起こすことが知られているたんぱく質の働きを邪魔する化合物を探し、培養液に加えた。2種類の化合物を入れると、細胞を浮かせたままでもほぼ変化することなく増やすことができた。化合物を取り除いてから神経など様々な細胞に誘導すると、問題なく変化させることができた。最終的に、1回で約3億個の細胞をつくることができたという。

 理研バイオリソース研究センターの林洋平チームリーダーは「大量培養により、産業化への道が開けたと考えている」と話した。

 論文は12日付で科学誌「eLife」に掲載された(https://doi.org/10.7554/eLife.89724.3別ウインドウで開きます)。(杉浦奈実)

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