月探査計画「HAKUTO―R」を進める宇宙企業ispace(アイスペース)の月着陸船が15日、打ち上げられた。予定の軌道に投入され、打ち上げは成功した。月には5月末にも着く予定で、日本の民間企業初の着陸をめざす。前回は2023年に着陸を試みたが、高度測定がうまくできず、月面に衝突して失敗。今回は再挑戦となる。
着陸船は日本時間15日午後3時11分に米フロリダ州のケネディ宇宙センターから、米スペースXのロケット「ファルコン9」で打ち上げられ、午後4時43分に、予定の軌道で分離された。
- 失敗しても前向きだったチーム ispaceが月へ再挑戦するまで
ispaceの計画では、着陸船は少ない燃料で月まで行ける「遠回り」の軌道を飛び、5月末から6月に着陸する予定だ。
民間企業では、米宇宙企業インテュイティブ・マシーンズが24年2月に世界で初めて月面に着陸させている。24年1月には日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機SLIMが着陸に成功しており、ispaceが成功すれば日本の民間企業で初となる。
ispaceの月着陸船には月面用の水電解装置や、宇宙での食料生産に向けた実験装置などが載っている。着陸後は、同社が開発した小型月面探査車も走らせ、「レゴリス」と呼ばれる月の土を採取する。
袴田武史代表は打ち上げ後の報道陣の取材に「ようやくここまでこれてほっとしている。前回の経験を生かして、気を引き締め、着陸、探査車の運用までこなせるようにしたい。月の資源の活用は地球の人類の持続可能性にも必要で、今回のミッションはそのための大きな一歩になる」と話した。
同じロケットには、米宇宙企業ファイアフライ・エアロスペースの月着陸船も搭載。3月上旬の月着陸をめざす。ispaceによると、月をめざす複数の民間着陸船が一緒に打ち上げられたのは初めてという。
さらに、米インテュイティブ・マシーンズの2回目の着陸船も年内に打ち上げられる。日本の宇宙ベンチャー「ダイモン」の小型月面探査車が月に運ばれる予定だ。
ispaceは10年に設立し、23年には東京証券取引所グロース市場に株式を上場。「月までの宅配便」ビジネスを実現し、地球と月の間の空間に経済圏をつくることをめざしている。
東京都内では、ispaceが社員やその家族、株主や政府関係者ら約300人を招き、「打ち上げ応援会」を開いた。「HAKTO―R」や着陸船名の「RESILIENCE」と書かれたタオルを掲げ、打ち上げ中継を見つめた。カウントダウン後にロケットが打ち上がると、会場は大歓声に包まれた。分離される様子が画面に映し出されると、大きな拍手がわいた。