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インドを訪問中の欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は2月28日、インドと年内に自由貿易協定(FTA)の締結を目指すことで合意したと明らかにした。追加関税やロシアによるウクライナ侵攻への姿勢をめぐってトランプ米政権との溝が深まるなか、EUはインド太平洋地域との関係強化に力を入れる。
インドは約14億人、EUは域内に約4.5億人の人口を抱える。インドのモディ首相と会談したフォンデアライエン氏は、「EUとインドのFTAは世界最大規模となるだろう」と述べた。半導体や人工知能(AI)、クリーンテクノロジーなど幅広い分野で、貿易や投資を促進させたいという。
安全保障や防衛でも狙う協力
インドにとってEUは、最大の物品貿易相手だ。EUによると、2023年のインドとの貿易額は1237億ユーロ(約19.4兆円)で、インドの貿易総額の12.2%を占める。インドのEU市場への窓口だった英国が加盟していた19年と比べても45%増加している。
インドとのFTA交渉は07年に始まったものの、関税の引き下げなどで折り合えず13年に中断。21年に再開し、今年3月から本格的に協議に入るという。
今回のインド訪問は、EUからフォンデアライエン氏のほか、閣僚にあたる21人の欧州委員が同行。インド側が「前例のない歴史的な訪問」と言うほどの力の入れようだった。
トランプ政権になって、欧州と米国の亀裂が決定的となるなか、EUはインド太平洋地域との関係強化に急いでいる。フォンデアライエン氏は、今後、インドとの間で貿易のみならず、日本や韓国との間で締結している安全保障や防衛分野でのパートナーシップを結びたいとの考えを示した。