神奈川県立病院機構の阿南英明理事長=横浜市中区、辻外記子撮影

 神奈川県の新型コロナ対策を率いた救急医は1月、能登半島地震のDMAT(災害派遣医療チーム)の一員として、石川県庁でDMATや自治体間の調整役を務めた。過去の災害支援やコロナ下の経験をもとに、今後の災害時医療に求められることを聞いた。

 神奈川県立病院機構理事長の阿南英明さんは、1月7日からと18日からのそれぞれ1週間、県庁に入った。

 能登で取材をしていた記者は阿南さんが県庁にいると知り、連絡をとって13日に話を聞いた。

 「能登の避難所にいる高齢の被災者の衰弱が激しい。命を救うため、広域搬送が必要な人がまだいる。しかし、使いにくい法律がなんと多いことか」

 広域搬送が必要になる人の大半は、お年寄りだ。医療を受けられる入院先の病院とともに、落ち着いて生活できる介護施設を見つけることが急がれていた。

 しかし、介護保険法では、施設への入所条件は介護認定に基づく。要介護3以上の人が対象の施設には、1や2の人は入れない。

 避難生活で急激に状態が悪化しても、容易に入所はできない。速やかな介護度の区分変更が望ましいが、変更するには主治医が意見書を書く必要があった。

 見直しの要望を厚生労働省に上げ、1月中旬には主治医でなくても意見書を作れるようになった。でも、認定作業には一定の時間がかかる。災害救助法の解釈には、省庁によるばらつきが目立った。

 神奈川に戻った1月末。阿南さんは「フェーズは変わった」と語った。

能登を離れるのか、残りたいのか。多様性が重要に

 「急性期の価値観は単純。と…

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