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DNA型抹消訴訟をめぐり警察庁からの回答を受け、会見で話す原告の奥田恭正さん(左)=2024年10月11日、名古屋中区、渡辺杏果撮影

 無罪判決が確定した奥田恭正さん(68)=名古屋市=のDNA型データなどを抹消するよう命じた名古屋高裁判決を受け、奥田さんと弁護団が名古屋市で11日に会見し、警察庁から抹消したとする書面が届いたと発表した。

 DNA型などのデータ抹消をめぐる訴訟が各地で起きている中、国側敗訴が確定したのは今回が初めてで、訴訟に絡み警察庁がデータを抹消した初のケースという。

 弁護団は8月の高裁判決後、警察庁に抹消手続きを明らかにするよう申入書を送付。警察庁は弁護団宛てに書面を送付し、判決を踏まえて愛知県警が警察庁と電話で協議し、9月12、13日にDNA型、指紋、写真データを同庁のサーバーから削除した、と回答した。

 会見した奥田さんは「(自分で)抹消が確認できないと納得できない。6年間裁判してきたことはなんだったのか」と憤りをあらわにした。弁護団は、押印や作成者名の記載が無い回答書は公文書と言えず、「単なるメモ書きだ」と批判。そのうえで、警察庁に抹消時の立会人の有無や、奥田さんらが抹消を確認できる方法について協議する場を設けるよう再度回答を求める方針。

 高裁判決によると、奥田さんは2016年、自宅前のマンション建設の抗議中に現場監督を突き飛ばした疑いで愛知県警に逮捕され、DNA型などを採取された。暴行罪で起訴後に無罪が確定。奥田さんは、警察庁が保管するDNA型などの抹消を求めて提訴し、名古屋高裁は今年8月に抹消を命じる判決を言い渡した。国、奥田さんともに上告せず、抹消命令は確定した。(渡辺杏果)

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