
フジテレビから多くのCMが消えて1カ月以上が過ぎました。同局の経営に大きな影響が出る一方、しわ寄せは視聴者にも及ぶと専門家はいいます。どういうことか。社会と広告とのつながりについて研究する関西大名誉教授の水野由多加さんに聞きました。
――フジで1月に多くの企業CMが公益社団法人ACジャパンの公共CMに差し替わって以来、なかなか元に戻らない状況が続いています。
「阪神大震災や東日本大震災、古くは昭和天皇崩御の際などに、民放全体でCMが自粛モードになったことがありました。さすがにこんなときにテレビで『商売、商売』いっている場合じゃないだろうという社会の雰囲気が投影されたわけです。しかし、一つのチャンネルだけでこれほどCMが消えたのは前代未聞のことです」
「今回フジはスポンサーに広告料を請求しないそうですが、これも異例のこと。予約済みのCMの放送を企業の都合で引き揚げることになるため、料金は返さないのが普通です。これはAC発祥の地である米国にも共通する広告業界のとても強力な取引慣行(場合によっては契約)なんです」
広告の存在意義
――フジの経営にとっては痛手ですが、視聴者にはさして影響がないようにも見えます。
「そう思う人は多いかも知れません。番組の途中でCMが流れるとうっとうしいことも多いですよね。CMには、公共の電波を使って押しつけがましく営業をやっている側面があるのはたしかです」
「しかし広告には公共性があ…