What if the A.I. Boosters Are Wrong?

 パソコンやインターネットが普及し、さまざまなハイテクの進化も続いているにもかかわらず、世界の先進国の多くは経済成長の低迷から抜け出せずにいる。経済協力開発機構(OECD)加盟国全体の2024年の平均経済成長率は、わずか1.7%と予測されている。経済学者はこの現象を「生産性パラドックス[productivity paradox]」と呼ぶ。

 人工知能(AI)がこの停滞の連鎖を断ち切る――。いま、そんな期待が膨らんでいる。一方で、それを疑う見方も少しずつ出てきている。特に懐疑的な見解を提示しているのが、マサチューセッツ工科大(MIT)の労働経済学者、ダロン・アセモグル教授の論文で、この問題をめぐる議論に火を付けた。

 アセモグル教授はこう結論づける。AIは労働者の生産性に対して「わずか」な改善効果しかもたらさず、今後10年間の米国の経済成長への寄与率は1%未満しかない、と。米金融大手ゴールドマン・サックスのエコノミストたちは23年、生成AIは同じく今後10年間に世界の国内総生産を7%引き上げる可能性があると予測しており、アセモグル教授の見立てはこれをはるかに下回る。

 楽観派たちは、AIに大きな期待を抱いている。対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」を開発した米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、AIが貧困を一掃すると考えている。生成AI向け半導体で圧倒的な市場シェアを誇るエヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、AI技術が「次の産業革命」をもたらしていると話す。

高齢化や人口減少は

 しかし、もしAI推進派が間違っているとすれば、労働人口の高齢化や減少に直面し、生産性向上への突破口を切実に必要としている先進国にとっては、困ったことになる。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

議論に火を付けた、アセモグル教授の論文。ほかにもAIブームに疑問を呈する人がいる一方、そもそも研究の前提が間違っているという批判もあるそうです。

 「AIが停滞を逆転させるこ…

共有
Exit mobile version