政府が26日に公表した脱炭素社会の実現に向けた国家戦略「GX(グリーン・トランスフォーメーション)2040ビジョン」の素案では、洋上風力発電を再生可能エネルギーの主力電源化に向けた「切り札」として、量産化や人材育成を強力に推進するとした。一方、陸上風力については地元との調整がうまくいかずに事業が頓挫するケースもあることから、エネルギー基本計画で「地域と共生しつつ適地を確保することが課題」とした。現状を探るため、風力発電の「先進地」を訪ねた。

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海岸沿いに並ぶ風車=2024年12月2日、秋田県能代市、多鹿ちなみ撮影

 秋田県能代市の田んぼの真ん中に、約120メートルの風車がそびえ立つ。その足元にはビニールハウスがあり、12月下旬から特産品の「白神ネギ」の苗を育てる実証実験が始まった。風車が生み出す熱を、地下に埋めたパイプを通じてハウス内に伝えているという。

 「『建てさせてけれ』じゃなく、農家から『来て』と言われる風車でないといけない」。そう語るのは、大森建設(能代市)の石井昭浩技術営業部長だ。実証実験に取り組むため特別目的会社をつくり、風車とハウスを建てた。

 日本海に面する能代市では、風は「やっかいもの」だ。同社が最初に風力発電を手がけたのは2012年。海に面した保安林に17基(3万9100キロワット)を建てる計画だった。だが、そんなときに届いたのは「あそこだけもうけやがって」という住民の声だった。

 地域を巻き込まないとうまく…

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