写真・図版
両機の衝突の状況
  • 写真・図版

 国の運輸安全委員会が25日に公表した羽田衝突事故の経過報告書からは、JAL機が大破せず、炎上するなか乗客・乗員全員が脱出できたのは、いくつかの出来事が重なった結果だったことも判明した。

 着陸しようとしたJAL機は、海保機の後方のT字形尾翼に正面から衝突。機体の一部は、JAL機の操縦室手前で機内の圧力を一定に保つ前方隔壁を貫通し、破壊していたという。

 だが、結果的に操縦室や客室に大規模な損壊はなかった。JAL機の前脚が着地する前だったため、海保機の尾翼より操縦室などが高い位置にあった。客室の床の構造が海保機体より強度が高かったため、「機首部が圧壊することなく形状を維持することができたと考えられる」(経過報告書)という。

 JAL機の前脚は事故時に折れたが、支柱は残ったままだった。衝突後、海保機に乗り上げる形でそのまま滑走。制御不能のまま約1400メートル進んだところで滑走路を右にそれ、滑走路脇の草地へ。草地を約300メートル走り、最後は支柱が地面に埋まった前傾姿勢で停止した。支柱が残っていたことで、機首部の胴体は地面との接触を避けることができたという。

 操縦室床下の電気室が損壊。方向転換やブレーキも利かなくなっていた。だがこれによって、逆推進力がかからず、非対称な抗力も生じなかった。主脚が全壊しなかったこともあり、「機体は横転や大きく進路変更することはなかった」と指摘した。衝突による衝撃で、重篤な負傷者が出なかったことも、乗客乗員379人全員が約10分間で脱出できたことにつながった可能性があるとした。

  • JAL機炎上、機内で何が 衝突から脱出まで、報告書が記す11分間
  • 事故15秒前、海保機に気づいた管制官「JAL機はどうなっている」

 報告書では、これらの事象について「安全性を確保するための設計基準の想定を大きく超えるものであった可能性がある」とも指摘した。

 また、胴体や主翼など火災で焼失した機体構造の大半が炭素繊維強化プラスチックで構成され、粉じんが生じているにもかかわらず、消火にあたった消防関係者が粉じん防護の装備をしていなかった点にもふれた。

 「諸条件が違っていれば、人的被害が拡大していた」可能性があるとし、今後は被害軽減の観点でも分析をすすめる方針だ。

【動画】乗客が脱出する様子 2024年1月2日羽田空港滑走路=Ricole (@ricole0704)提供

【動画】外から見た炎上中の機体2024年1月2日午後5時50分ごろ羽田空港=あばると議長 (@express595)提供

共有