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有機農法で作られた新米を味わう子どもと生産者の斎藤春男さん(左)=五泉市橋田

 新潟県五泉市内の小中学校で今月、化学肥料や農薬を使わない有機農法で生産された新米が、給食で提供されている。持続可能な米作りを目指して同市は有機農業を推進しており、今年度は4人の生産者が有機栽培でコシヒカリを作った。産地づくりを進めたい市は、将来的に給食のご飯をすべて有機米に切り替える構想で、より多くの農家が参加することを期待している。

 今月12日、橋田小(同市橋田)の児童が、地元産の有機米を使った給食を食べた。この日の献立は塩ザケ、ひじき煮など。生産者や地元JAの関係者、市の幹部らも一緒に食卓を囲んだ。

 5年生の広瀬愛琉(あいる)さん(11)は「ふだん食べているご飯との違いはよく分からなかったけど、おいしかった」。同じく5年の長谷部晃希さん(11)も「ちょっと甘い気がした。もちもちしていておいしかった」と笑顔を見せた。

 一緒に食べた生産者の斎藤春男さん(63)=同市丸田=は、除草剤をまく代わりに紙を敷いて雑草を抑えるなど栽培方法を工夫している。「8月に大雨と風でよく育った稲が倒れて苦労したが、できはよく、おいしいですよ」と話した。

 有機農業は化学肥料・農薬などを使わず、生産に伴う環境負荷をできる限り減らした農業のこと。原油や肥料の価格高騰、農業の担い手不足などが懸念される一方、食の安全・安心への関心は高く、農林水産省は有機農業に取り組む産地の支援をしている。

 五泉市は今年1月、持続可能な農業の確立を目的に「五泉市有機農業推進協議会」を生産者やJAなどと設立。斎藤さんら地元農家の協力を得て、市内4カ所で有機農法による米作りの実証実験を行ってきた。

 市によると、現在、取り組みを行う水田は計1・2ヘクタール。今年は4・8トンの収穫があった。年間を通して地元産の有機米で市内の小中13校の給食をまかなうには、今年の10倍の収穫が必要とみており、市は生産者の協力をさらに求めている。こうした取り組みを通じて地元産有機米の認知度向上やブランド化、地産地消などを図る方針だ。

 また、より多くの人たちに有機農業に取り組んでもらうには、その他の販売先の確保も重要だとしている。市農林課の担当者は「今後、旅館やホテルなどの意向調査を行い、安定的な販路の確保にも力を入れたい」と話している。

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