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給食でも提供される「あげパン」。新店舗でも一番目立つ場所に置かれた=2024年11月15日、横浜市南区、小林直子撮影

 ハマっ子の3分の1は、かもめパンでできている――。そんな評判が立つほどに横浜育ちの子どもたちの給食として親しまれてきた「かもめパン」(横浜市南区)。今年創業100年を迎えた老舗を支えるのは、パンで結ばれた夫婦と、地域との深いきずなだ。

 給食で人気のあげパンや天然酵母のクリームパン、丸形の焼きそばパンなど約80種が並ぶ店内は真新しい。11月に半世紀ほど続いた本店を400メートル離れた場所に移したばかりだ。だが、4代目社長の藤江嘉昭さん(52)のパンに対する思いは変わらない。「おいしさは当たり前。食べてあったかい気持ちになってもらいたい」

 1924(大正13)年に曽祖父の喜太郎さんがせんべい製造会社として創業した。当時の社名は「三河屋」。太平洋戦争中に軍や配給用のパンを製造した縁で、戦後は学校給食のパンを作るようになった。神奈川県の食糧課(当時)が名づけた「かもめパン」という愛称を社名にした。

 社名のロゴが入ったトラックやパン箱は学校でなじみの光景だったという。工場が社会科見学の定番コースだったこともあって、「かもめパンといえば給食パン」のイメージが定着した。

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