作家の松本清張(1909~92)がひいきにしていた深大寺(東京都調布市)のそば屋「門前」が、清張がいつも注文していたメニューを取り入れた特別なお膳で、能登半島地震の被災地を支援した。清張は能登や深大寺を舞台にした作品も描いており、清張がつなぐ縁だ。
「清張さんがおみえですよ」
清張が好んだ味を取り入れた「そば膳」は、14日に60人分用意された(要予約で3千円。当日は予約客のみ対応)。かつて、門前では「清張さんがおみえですよ」と声がかかると、ニジマスの塩焼き、そば、天ぷらを用意。「清張メニュー」と呼んでいたという。今回提供される「そば膳」では、ニジマスの代わりにヤマメの唐揚げを入れ、みそおでんやそばがき汁粉もつき、能登の酒も出した。売り上げの一部は、来年1月10日に同市文化会館たづくりくすのきホールで開かれる能登地震チャリティーコンサートのチケット購入や義援金にあてられた。
1960年に清張が発表した「波の塔」は、汚職事件を背景に人妻と青年検事の秘めた恋を描いた長編小説で、深大寺は2人の逢瀬(おうせ)の舞台として描かれた。映画にもなり、それまであまり知られていなかった深大寺には、多くのカップルが訪れるようになったという。「波の塔」の一部は建て替え前の「門前」の2階で書かれ、店主の浅田修平さん(77)の父親がニジマスをさばく様子も描かれている。
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