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プロスキーヤー三浦雄一郎さんの南米最高峰遠征に参加したときの平出和也さん(右)と中島健郎さん=2019年1月7日、アルゼンチン・チリ国境付近、金子元希撮影
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 「世界最強」と称された登山家の平出和也さん(当時45)と中島健郎さん(同39)が2024年7月、パキスタン・カラコルム山脈にある世界第2位の高峰K2(標高8611メートル)の西壁未踏ルートに挑み、帰らぬ人となった。生前のペアを知る山岳ジャーナリストが歴史を塗り替えてきた2人の軌跡を振り返った。

雪と氷の絶壁にひらいた新しい道 

 名実ともに2人は世界最強のアルパインクライマーだった。そんな評価を受けていても、「非情の山」は容赦なかった。

 7月27日、K2の西壁未踏ルートを登攀(とうはん)中、ザイルで結ばれたペアは約1200メートル滑落し、生還できなかった。

 2人は垂直に近い「雪と氷」の未踏の壁に複数の新ルートをひらいてきた。基本的には固定ロープは張らない。装備は最小限に絞り、登攀メンバーは2人だけだ。

 ともに山岳カメラマンの肩書も持つ。ザイルパートナーの滑落、直撃する雪崩――。迫力ある映像で登山界に新風を吹き込んだ。

僕は付け足しですか

 2008年、平出さんは登山家の谷口けいさんとインド北部のカメット(7756メートル)南東壁の初登攀に成功した。そして、登山界で最も権威があるとされるピオレドール(金のピッケル)を日本人で初めて受賞した。

 当時の印象は「全身全霊でヒ…

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