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キリスト教徒だった妻の遺灰の一部を入れたイースターエッグ=2024年11月9日、東京都内、杜宇萱撮影

 「勝訴したよ。安心して」

 10月下旬、山形県遊佐町の海岸で、東京都の男性(77)は心の中でつぶやきながら、花束を海へ投げ入れた。20代の頃、何度もデートで訪れ、9年前に妻の遺骨を散骨した海。亡き妻への裁判勝訴の報告だった。

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妻の遺骨を散骨した海を訪れた男性。このあと、花束を海に投げ入れた=2024年10月26日、山形県遊佐町、杜宇萱撮影

 2015年5月、家政婦と介護ヘルパーとして働いていた妻(当時68)を突然、失った。要介護者宅に泊まり込み、7日間連続、総労働時間にして105時間の勤務の後、倒れた。死因は急性心筋梗塞(こうそく)だった。

 「介護の仕事は自己犠牲を払わずにはできない仕事。だけど私は続けます」と家族に思いを伝えるほど、要介護者の安全の見守りを大切にしていた。

 遺体安置室で、横たわる妻の額に手を当てた。「長時間労働、きつかったろう」。泊まり込みと連続勤務が多く、突然の死は過労が原因だと思った。だが、労働基準監督署は、妻を一般家庭に雇われた「家事使用人」とし、労災の適用外とした。

家事は労災の対象か

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男性と妻の写真=2024年11月9日、東京都内、杜宇萱撮影

 20年、弁護士から勝率3%…

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