強いまなざしが印象的な俳優の山口馬木也さん(51)。時代劇だけでなく、刑事ドラマなどにもこつこつ出演を重ねて25年、ついに代表作にめぐりあった。宣伝費などがない自主制作映画ながら大ヒット中の映画「侍タイムスリッパー」で、主人公の現代に降臨した幕末の会津藩士を演じた。笑って泣けて、本格の立ち回りも爽快な物語は人気を呼び、東京の1館から始まった上映は全国に拡大。国内外の映画賞候補にも挙がった。岡山の母親は息子の初主演作のパンフレットをご近所に配ろうとまとめ買い。夢に見てきた脚光は巡り合わせが生んだ「すごい奇跡」と感じている。
コロナ禍で出演予定の舞台が中止になり「この仕事は社会に必要とされないのか」と焦燥が募る中、「殺陣に定評がある」と話が舞い込んだ。通常だとたいてい脚本はまだなく、こんな感じの役柄という程度の情報しかない。しかしこの時は届いた完成脚本を読み、とても面白かった。「『自主制作』とか『主役』とかは全部頭から消え、ただ『やりたい』と思った。時期がずれていたら僕には受けられなかった仕事。本当に幸運でした」
資金も人も足りず、撮影の進…