福井県北部で遊泳者を驚かし、甘がみして遊ぶことを覚えた野生のミナミハンドウイルカは、2023年以降、さらに遊泳者が多い福井県南部の敦賀半島に移った。
敦賀半島にはビーチが10以上あり、ひと夏に約10万人が泳ぎにくる。人好きなイルカにとって、うってつけの遊び場だ。
【連載初回はこちら】50人にかみついたイルカを追うと…
福井県沿岸で50人を超える海水浴客らにかみつくなどしてけがを負わせたイルカは、どこから来たのか。目撃者の証言をたどり、共生の糸口を探ります。全7回の連載です。
イルカは当初、仲間同士でたわむれるように、人にじゃれついていた。水中でまとわりつき、クチバシでつつき、生殖器をこすりつけた。
イルカの生態に照らすと、これらは交流を深めるための友好的なしぐさと考えられるものだった。
ところが23年7月、イルカの振る舞いに変化があった。
イルカが人に対して、より危険な行動に出るようになったのだ。
例えば、23年7月16日早朝。敦賀半島の水晶浜海水浴場(福井県美浜町)にイルカが現れ、岸から5メートル地点にいた岐阜県可児市の男性(62)に前触れなく突進した。敦賀海上保安部によると、男性は胸を強打し、あばら骨が3~4本折れたという。
突進は、イルカが怒った時にとる行動の一つとされる。英BBCによると、ブラジルでは1994年、イルカが遊泳者に突進し、死亡させた例がある。遊泳者は酒に酔い、イルカの背中に乗ろうとしていたという。
福井のイルカは、何に怒っていたのか。
記事の後半では、傷ついたイルカの姿を動画とともにお伝えし、共生の道を考えます。
取材の過程で、イルカがこの…