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神里達博さん

神里達博の「月刊安心新聞+」

 今年は、「選挙の年」だった。

 まず1月に台湾総統選があった。2000年以降、2期8年ごとに政権交代をしてきたが、初めて民進党政権が3期目に入った。ただし、過去の選挙と比べると民進党の総得票数は減少傾向にある。実際、国会にあたる立法院選挙では過半数をとれず、国民党が第1党となった。

 4月には韓国でも総選挙が行われた。尹政権の「中間評価」と位置づけられていたが、野党・共に民主党が大勝、いわゆる議会の「ねじれ」現象が続くことになった。

 また「世界最大の民主主義国」、インドのモディ首相が率いるインド人民党も、事前には大勝が予想されたものの勢力を減らし、過半数に至らなかった。隣国パキスタンでも与党系が連立してシャバズ・シャリフ氏が首相を継続することになったが、議会は野党系が最大勢力となった。

 世界で4番目の人口、約2億8千万人が住むインドネシアでは、国軍出身のプラボウォ氏が第8代大統領に決まった。10年ぶりのトップ交代であるが、彼の率いる政党連合も、議会の過半数に届かなかった。もっとも彼は政権移行期に他の政党を懐柔し、オール与党化を進めている。

 このように特にアジアでは、開票の結果、与党が過半数をとれず、程度の差はあれ政権運営に緊張感を与える格好となるケースが目立った。そして周知の通り、同じ状況が日本でも出現したわけである。

 もちろん世界には、事実上、選挙がない国もある。また選挙があっても、1月のバングラデシュ総選挙のように、野党がボイコットして自動的に与党が圧勝、しかし投票率が著しく低下、という例もある。同じ「選挙」でも、その内実は色々だ。

 それぞれの国の事情は異なるので、単純な整理はあまり意味がないだろう。それでも全体的な傾向としては、政権が過度に強くなることを人々は今、嫌っているように見える。世界的なインフレにより、どこの国でも庶民の生活が逼迫(ひっぱく)していることが影響しているのかもしれない。

 一方、欧州でも重要な選挙が続いた。6月には欧州議会選挙があったが、私たちにはなじみが薄いので、少しその仕組みを確認しておこう。

 これは5年に1度、EU加盟…

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