写真・図版
イルカの絵が描かれた建物がある飯田港=2024年9月16日午前、石川県珠洲市、乗京真知撮影

 2020年夏に石川県珠洲市に現れ、「すずちゃん」と名付けられたミナミハンドウイルカは、まだ2歳くらいの「赤ちゃんイルカ」だった。普通なら母イルカの乳を飲み、ぴったりとくっついて泳いでいる時期だ。

 甘えたい盛りの赤ちゃんイルカは、何らかの理由で母イルカと離れてしまった。

 上手なエサの取り方や、他の動物との距離感を教えてくれるはずの母イルカは、そこにはいなかった。代わりに相手をしたのが、沿岸の遊泳者や漁師たちだった。

【連載初回はこちら】50人にかみついたイルカを追うと…

福井県沿岸で50人を超える海水浴客らにかみつくなどしてけがを負わせたイルカは、どこから来たのか。目撃者の証言をたどり、共生の糸口を探ります。全7回の連載です。

 イルカは石川県沿岸を行ったり来たりしながら、4年かけて徐々に体を大きくし、200キロ以上離れた福井県美浜町まで南下した。その過程でたびたび人をかむようになり、「かみつきイルカ」と呼ばれるようになった。

 何がイルカの性格を変えさせたのか。私はイルカの進路に沿って調べていくことにした。

記事の後半では、最初期とみられるイルカの「甘がみ」被害に遭ったご家族からの提供動画もご紹介します。

 イルカが最初に目撃されたの…

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